甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)
「甘い蜜の部屋」は足かけ10年という長い年月をかけてじっくりと完成されたという。
委曲を尽くした登場人物の濃密な心理描写は、それだけのゆとりを持って十二分に練られたものであろう。
文章自体は抑制が効いていて、淡々とした筆運びであるが、匙で掬い上げれば艶やかな黄金の帯を描いて滑らかに垂れる蜂蜜のようである。
この小説におけるライトモチーフは、いうまでもなく「父娘の(精神的)インセストタブー」である。これが主人公モイラが関わる「愛の事件」の背後で通奏低音のように響いている。
天授の美貌を持つモイラ。
しかし、父親に運命的にスポイルされて育ったその心の奥には、無垢ではあるが、愛に関して成熟のない、どろんとした沼のような意識しか存在しない。
その沼は混沌としていて、おそらくモイラ自身も深さを測りかねているのだ。
モイラの無意識の蠱惑的な仕草。
時に「百合の茎を折った時」に発する匂いにも似た、妖しげな薫香を放つ身体。
モイラと出会う幾人もの男達は、あたかも、怪鳥セイレーンに惑わされた船乗りのごとく、一人、また一人、モイラの中にある深い沼に飛び込み、自ら溺れていくのである。
それを見つめ続ける父親。
溺れていく男達に勝ち誇ったような笑みさえ浮かべかねない父親がいつも傍らにいる。
モイラの沼の有り様を知っているのは父親だけなのだ。
決して現実世界では容認されないタブーではあるが、この父娘は意識的であれ、無意識的であれ、遥か彼方にその存在を確かめている。
モイラの愛は、何人かの善良な男の波長とは共鳴せず、結局、父親とだけシンクロナイズして収斂していく。
「甘い蜜の部屋」は父、その娘モイラ、そしてモイラを取り巻く男達との甘美で、かつ危うい愛の彷徨を精緻に描いた作品である。
読み進めていると、なぜここに登場する人物はことごとく他の人物の心理状況が手に取るようにわかるのかという疑問が湧く。まぁ、しかしそれはたいしたことではあるまい。と言うより、その手法がこの小説をより完璧なものとするための必要条件なのだ。
また、あまりにも細やかな描写を読み続けていると、時として「女の長電話に付き合わされている」ような感覚を覚えることもある。しかしそれは、また一方、旨い酒を飲んだ時のほろ酔いの心持ちにも似ているのだ。
確かな表現力は、やはり流石と言うほかないのである。
なお、すでに誰かが指摘しているかも知れないが、牟礼藻羅(MURE MOIRA)は、おそらく、森 茉莉(MORI MARI)の変形アナグラムであろう。
Panty&Stocking with Garterbelt パンティ&ストッキング PMフィギュア 全2種セット
「UFOキャッチャーで何回も挑戦しているけどなかなか取れない!でも欲しい!」という方には納得のいく値段と商品の良さだと思います!
アーケード景品なので若干違和感を感じる人もいるかもしれませんが、個人的には全然違和感はないですね。
パーツが細かいし、2体セットでとても迫力がありながらもカッコいいしカワイイ!!
初めてネットショッピングをしましたが、良い買い物ができました。(^∀^)♪
恋人たちの森 (新潮文庫)
4編中3編が同性愛ものですが、別に「ゲイ」という部分に重きはなく、
とんでもなく綺麗で贅沢で現実離れした、惑溺しそうな恋愛小説集です。
森茉莉の耽美ものは、好き嫌いが激しく別れるかもしれません。
句読点の打ち方や漢字の使い方が独特で、そこも好みの別れるところでしょうが
ちょっと真似したくなるような魅力があります。字面の美しさはこの作者ならではです。
また、この人は自他共に認めるすごい食いしん坊だったらしく、食べ物の描写が
上手でそこも魅力です。美男の主人公がレストランで恋人の美少年のためにあつらえたメニューが
「鶏の清肉汁(コンソメ)と冷肉(コオルドビーフ)にちさのサラドゥ、
乾葡萄入りの温かいプディングに、果物と珈琲」・・・何でもないようで、すごく美味しそうでしょう?