Symphonies 1-9
クリュイタンスによるベートーヴェンの全集は、かのカラヤンよりも先にベルリン・フィルを使い完成させたものだが、これが実にいい全集だ。
1950年代も終わりの頃に録音されたものにも関わらず、幸いなことにヒスノイズは多めとはいえ、実に瑞々しい音色が聴ける。しかも、このころのベルリン・フィルはカラヤンが音楽監督に就任して間もない頃だったので、フルトヴェングラー時代の音も多少残っているという実に魅力的な時代でもあり、そうしたベルリン・フィルの響きを堪能できるという意味においても大変貴重な全集だと思う。
クリュイタンスの演奏はどの曲を聴いても必要以上に深刻になるところがなく、聴いていても威圧されるようなことはない(もちろん、フルトヴェングラーのようにうむも言わせぬような圧倒的なベートーヴェンや、カラヤンのように切れ味抜群の演奏も魅力的である)。しかし、だからといってゆるいのかというと、そんなことは一切ない。驚くほど緻密で、精密な演奏を要求しているところもあり、構造は揺ぎ無い。
さて、この全集、どの曲もそれぞれに大変魅力のある演奏をしているのだが、偶数番の曲が実に素晴らしい。とても健康的で、色彩感に富み、そして実によく歌う。ポピュラーな「田園」はもちろんのこと、交響曲第8番のゆったりと歌うがごとく演奏は、この曲の決定盤の一つとして挙げたいくらい気持ちがいい。こんなにも気持ちよく偶数番を聴ける全集はそうないだろう(アバドの新録の全集のキレの良い演奏も魅力的ではある)。
もちろん奇数番の演奏だって素晴らしいのだが、偶数番の気持ちのいい演奏を聴きたいと思われて、クリュイタンスの演奏をお持ちでなければ、ぜひご検討頂きたい。
これほど格安でこの素晴らしい全集が手に入るようになるとは贅沢な時代だと思う。
ベルリン・天使の詩 デジタルニューマスター版 [DVD]
天使は愛らしい少女でもなければ子供でもない。黒い服を着たおっさん。
天使はそこらじゅうにいる。ベルリンの図書館で、電車の中で、街角で、タクシーで映画の撮影所で、ベルリンの幾多の人々の心の声にそっと耳を傾ける。それは希望、絶望、いたわり、憎しみ。そして天使はときどき肩を抱いてくれる。モノクロームの画面からは天使の視点から、客観的に、人間の世界が描かれる。ただモノローグだけが流れる。とても人間の世界が虚しく見える。
サーカスの女性に恋をした天使(おっさん)が人間になりたいと願い、羽を失った瞬間から世界は色を帯びる。人間の心の囁きに代えて、空気の冷たさ、空の青さ、コーヒーのぬくもり、私たちがあたりまえに感じているものが、人間になった天使の歓喜の視点で語られる。それはとても心躍ることだ。恋をし、体温を感じ、ただ生きていることはなんと彩りに満ちた素晴らしいことか。
かつて自分も天使から人間になったハリウッド俳優が、おっさん天使に言う。
「周りには結構いるんだよ(天使から人間になった連中が)」
私の傍にも天使がいるかもしれない。そんな不思議な、でもありそうな言葉にただ静かな涙がこぼれた。理由は私にもわからないけど、静かに泣いた。
Festliche Fenstersterne zur Advents- und Weihnachtszeit
トランスパレントスターを作りたくて購入。独語は一つもわかりませんが、カラーの折り図でとてもわかりやすいです。
初めてでも、本の通りの物が出来ました。
ベルリン陥落 1945
文章が上手で、地図も見やすい。 大冊ながら一気に通読できる。
だが戦史・外交史としてはいただけない。 4号戦車をしばしばティーガーと誤記したり、FW189偵察機をFW190戦闘爆撃機と混同したりしている。 三大国の秘密会談の場面ではまるでスターリンやチャーチルが著者に本心を打ち明けたかのような記述が見られる。 あくまで小説であって論文ではないのだが、出版前に原稿を専門家に校閲して貰っていればなあと思ってしまう。 それでも読みごたえ十分。 買って損はないと言える。