薪能 (角川文庫)
この作者の日本や日本文化に対する姿勢というのは、何か必死なものがある。それは自身の出自に依るものだろうと一般には言われている。「日本の滅びのことしか考えていなかった。滅び行くものの他は一行も詠うまい。そんな決心をした人もいた」(情炎)、というような主人公の独白を読むとき、そこまで追い込む作者の執念には圧倒されてしまう。
日本の古典文化への傾倒という点では、「活花の師匠が、如何にして上手に花を活けるか、という技巧に熱中しているなかで、(中略)・・・花器や壺に無造作にひとつかみの花を投げ入れ、あるいは小さな湯呑茶碗に一輪さしの花を添えたりした」(情炎)と言うような箇所に、神髄に固執する作者の心根が感じられる。世阿弥の「花伝書」の語句を冠した作品もある!作者にとっては現代風の装飾過多な風潮というものには苦々しさを感じてならなかったのだろう。
本作品集では主人公達(概ね不倫関係にある男女だが)は自分で自分を追いつめ、孤立して破滅していってしまう。作者は、日本文化に対する確固たる視点を持つ主人公達を、繰り返し追いつめ、破滅させることで、自分の身代わりとして自身の破滅を回避して延命するつもりだったのだろうか。やはり圧倒される執念だ。
残りの雪 (新潮文庫)
幼い頃からの本好きは、やがて早熟な思春期に突入。立原作品の
「恋」に触れるたび、恋する人とはこのように美しきものかと、
己の身姿を鏡に映し冷静になるでもなく一人トキメイテいたのでした。
あれから数十年の歳月が過ぎ、この作品を読みふける休日、
日本とはこの様に美しき国であったかと思い巡らし旅立ちの
誘惑にかられるのです。まるで上質な日本画を描くようにつづられた
美しい作品ではないでしょうか。落ち着いて読むことの出来る
激しい恋愛物語です。
情炎 [DVD]
これはすごい・・・。
吉田監督は、なにくわぬ顔で、お昼のメロドラマとアヴァンギャルドを融合させている!!
吉田作品の中でも、「去年マリエンバートで」(アラン・レネ監督)からの影響がとりわけ強い一本だと思います。
岡田茉莉子は相変わらず美しいです。
美食の道 (グルメ文庫)
筆者の食への思い入れが
ひとつひとつの食材を通して
ひしひしと伝わってくる作品だと思います
季節によって
旬のものがいろいろあって
それを楽しむということを
今の日本人は
少しずつ忘れていっているのを
思い出すのにも
最適なものだとも思いました
あわてずにす
ゆっくりと読むと
良いでしょう