カンザス/カンザス経由→N.Y.行き [DVD]
走行中の列車のコンテナに飛び乗るウェイド。危うく振り落とされそうになった所を、コンテナに乗っていた男、ドイルに助けられる。偶然、列車に乗り合わせた対照的な二人の青年、前科者のドイルと好青年のウェイド。ウェイドは友人の結婚式に行くために、方や前科者のドイルは故郷に向かう所だった。やがて列車はドイルの故郷、カンザス州チェロキーへ到着。ウェイドはドイルに誘われるままに、列車を降りるが、そこでウェイドは突如豹変したドイルに強要され、銀行強盗を働くことになってしまう。・・・
仲良くなった2人の青年が、ある事件を機会に反目し合うようになってしまう、というストーリーはなかなか興味深かったのですが、どんどん罪を犯していくドイルのキャラクターに、不良青年というよりも危ないヤツ、というイメージを持ってしまいました。あと、ウェイドは銀行強盗の後に英雄的行為を行って一躍ヒーロー扱いをされるのですが、もっと「悪党か、英雄か」ということで悩んでくれても良かったのでは、と思っています。埃っぽいカンザスの美しい風景も、見所の1つです。
What's The Matter With Kansas?: How Conservatives Won The Heart Of America
20世紀初頭には、農村ポピュリズム運動の震源地であり、左翼政治の拠点だったカンザス州。現在は共和党保守派の牙城と化している。カンザスで何が起こったのか?本書は、カンザス出身の著者が、州内の地域的な格差・差異に配慮しつつ、その変貌をつぶさに調べ上げた秀逸なルポルタージュである。新自由主義化による産業の空洞化、民主党政治の後退、本来階級的問題であるはずの社会矛盾が、ねじれた形で宗教問題に仕立て上げられていく政治過程が見事に描かれている。本書で最も興味深いのは、新保守主義政治が普遍的なものではなく、各々の地域の歴史性に規定される形で展開することを明らかにしているところだ。カンザスは他地域と異なり、人種問題がメインイシューになっていない。移民や非白人人種が少ないのもあるのだが、この州が歴史的に奴隷自由州であり、高名な人種解放の闘士ジョン・ブラウンの出生地であることがその大きな理由だ。ジョン・ブラウンの果敢な闘争エネルギーが、当地の歴史的模範となることで、右派の活動に正統性を与えているのだ。新保守主義はこのように一般論では片づけられない、地理的な不均等性をもっている。そのことを実証した、本書は数少ない書である。